ITIL(アイティル)とは? メリットや成功のポイントをわかりやすく解説

 株式会社エスエーティ

ITサービスマネジメントを効率的に実施していくには、ITILの活用が欠かせません。ITILの活用によって、顧客満足度の向上やコスト削減などのメリットを得られます。本記事では、ITILの概要や歴史、導入で得られるメリット、成功のポイントなどについて分かりやすく解説します。

ITIL(アイティル)とは? メリットや成功のポイントをわかりやすく解説

ITILとは

ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略であり、ITSM(ITサービスマネジメント)の成功事例を整理したガイドラインを指します。適切にITサービスを管理するためのノウハウが整理されており、活用によって効率的かつ成果につながるITサービスマネジメントを実現できます。

IT技術の進歩は著しく、現在でも次々と新たなサービスが誕生しています。そのため、ITILの内容も、サービスの変化に応じて進歩してきました。これまでに幾度となく改訂が行われ、2019年に最新版となるV4がリリースされました。

そもそもITSM(ITサービスマネジメント)とは

ITSMとはITサービスマネジメントのことであり、正式にはInformation Technology Service Managementと表記されます。自社の社員や顧客など、ITサービスの利用者が問題なく快適に利用できるよう、継続的な改善を行う活動です。

どれほど高度な技術を用いたITサービスであっても、利用者が使いにくいようでは問題です。快適に使えない、頻繁に不具合が発生する、といったサービスを顧客に提供しても満足してもらえず、かえってクレームの発生につながりかねません。

企業においても、さまざまな部署がITサービスを利用しています。それらを快適に利用できなければ、業務に支障をきたすおそれがあり、業務効率の低下も招きかねません。

このような事態を回避すべく取り組む活動が、ITサービスマネジメントです。顕在化している問題があれば改善すべく速やかに取り組み、今後発生しうる問題の抽出や対応策も考えなくてはなりません。これらの活動を継続的に行い、いつでも利用者が快適にサービスを使えるよう努めます。

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ITIL誕生の歴史

ITILはイギリスで1989年に登場しました。この時代のイギリスは経済が低迷しており、状況を打破するためにさまざまな改革が行われていました。

ITILは、これらの改革から生まれたフレームワークです。きっかけとなったのは、中央コンピューター電気通信局が打ち出したひとつの仮説でした。

同通信局は、ITのマネジメント手法を確立させれば、サービス提供のコストダウンと品質向上を狙えると仮説を立てました。仮説を打ち出すだけでなく、実際にアクションを起こすことで仮説の正しさを実証していきました。

この取り組みにおいて、いくつもの成功事例が誕生し、それを書籍群としてまとめたものがITILです。

ITILの5つの構成要素

ITILV3ではサービスライフサイクルという概念が取り入れられており、サービス・ストラテジ、デザイン、トランジション、オペレーション、継続的なサービス改善の5つの要素で構成されています。それぞれのフェーズの概要は以下の通りです。

サービス・ストラテジ

ストラテジは戦略のフェーズです。ビジネスにおいて戦略が重要なのは言うまでもありません。市場で優位をとるために何をすべきか、どの程度のリソースが必要なのか、といったことを戦略的に考えます。

同フェーズにおける検討事項のひとつが需要管理です。優れたITサービスであっても、需要がなければ利益につながりません。また、事業関係管理やITサービス財務管理、サービスポートフォリオ管理なども含まれています。

サービス・デザイン

ITサービスの設計に関する情報をまとめています。打ち出した戦略にのっとり、サービスの計画や設計を進めるフェーズです。

適切に設計ができていないと、スムーズにサービスを導入できない可能性があります。また、導入後に深刻な問題が発生する可能性もあるため、しっかりと確認しなくてはなりません。サービスの水準は当初の目標に届いているか、そもそも有用なサービスであるか、といった部分もチェックします。

サービスレベル管理や情報セキュリティ管理、ITサービス継続性管理、デザインコーディネーション、サプライヤー管理などが検討事項に含まれます。

サービス・トランジション

設計が完了したサービスを、本番環境へと移行する手法などを整理しています。どのようにサービスを立ち上げるのか、どう運用していくのかといったことを考えるプロセスです。

ナレッジ管理や変更管理、移行の計画立案、変更の評価などが含まれます。移行する際に何かしらのトラブルが発生すると損失を負いかねないため、スムーズに進められるよう工程を適切に管理します。

サービス・オペレーション

日々の運用における情報を整理しています。インシデント管理やイベント管理、アクセス管理、問題管理、要求管理、サービスデスク、IT運用管理、アプリケーション管理などが含まれます。

サービスの運用が始まっても、不具合や異常が発生する可能性は否めません。そのようなとき、どのように対処するのか、同じ状況を引き起こさないためには何をすべきか、などを考えます。

継続的なサービス改善

導入した直後は特に問題がなくても、使用しているうちにさまざまな問題点が浮き彫りになる可能性があります。たとえば、システムが重すぎて使いにくい、視認性が悪く状況把握に難がある、といった具合です。

こうした問題点をそのままにしておくと、サービスの利用者は快適に利用できません。そのため、継続的な改善への取り組みが求められます。効果測定による現状把握を行い、必要に応じて改善活動を実施します。

ITILを導入するメリット

ITILを導入するメリットとして、顧客満足度の向上が挙げられます。また、インシデントの減少やレジリエンスの向上につながるほか、コスト削減や市場環境変化への対応力向上も期待できます。

顧客満足度の向上

ITIL導入によって、顧客満足度の向上効果が期待できます。たとえば、事例を参考にして問題が発生したときの対応をマニュアル化しておけば、トラブルが発生してもスムーズな対応が可能です。スピーディーにトラブルを解決できるため、顧客の満足度が高まります。

サービス品質そのものが高まる効果も期待できます。ITILを参考にしたマネジメントによって、社員が業務を遂行しやすい環境を整えられるためです。

社員が快適に使いやすいシステムを提供できれば、自然と業務効率が高まります。顧客への対応もスピーディーとなり、ニーズにもしっかり応えられるようになるため、結果的に顧客満足度も向上します。

顧客満足度が高まれば、自社の商品やサービスに愛着を抱いてもらえる可能性があり、末永く利用してくれるリピーターになってくれるかもしれません。数多くのリピーターを抱えることで、新規顧客獲得のコストを削減し、継続的な利益が望めます。

インシデントの減少・レジリエンスの向上

ITILの活用によってリスク管理を徹底でき、インシデントの発生を抑制できます。ITILにおけるインシデントはサービスの中断またはサービス品質の低下を引き起こす、あるいは引き起こす可能性がある出来事を指します。こうしたインシデントが発生することによって、自社の業務がストップしてしまう、顧客がサービスを利用できなくなる、といったことが起こり得ます。

リスク管理を徹底してインシデントを減少させることができれば、安全にサービスを利用できると顧客からの評判がよくなり、満足度の向上効果も期待できます。

また、レジリエンスを強化できるのもメリットです。先人が試行錯誤の結果たどり着いた成功事例を活用できるため、困難な状況に陥った際にもスピーディーな立て直しが可能です。

コスト削減

ITILの導入によって、コスト削減の効果も期待できます。成功事例をベースとしたガイドラインを活用すれば、真に必要なポイントへリソースを投入できます。無駄な出費を削減し、結果的にコストダウンにつながります。

よりよいサービスを提供するため、多額の資金を投入するのは間違いではありません。ただ、やみくもに資金を投入したところで、必ずしもサービスの品質が向上するとは限りません。ITILを活用すれば、コストを抑えつつも顧客が満足するサービスを提供できます。無駄なコストの削減によって、浮いたリソースを新たなビジネスの開発に投入したり、人材育成に使用したりといったことも可能となるでしょう。

市場環境変化への対応力向上

市場環境は、さまざまな要因で変化します。市場環境の大幅な変化が起きると、これまでと同じように事業を営んでいても、売上や利益が低下してしまいます。企業が継続的に安定した利益を獲得し続けるには、市場環境の変化に合わせたビジネスの展開が必要です。

ITILを導入すれば、ITサービスのライフサイクルについて理解できます。サービスの誕生から廃止までのプロセスについて正しく理解でき、マネジメントスキルも身につきます。

その結果、市場環境が変化してもベストなタイミングでサービスの提供が可能です。的外れなタイミングでサービスをリリースしてしまうリスクを回避でき、組織における利益の最大化も図れます。

ITIL導入の成功ポイント

ITILをただ導入しただけでは、成果が期待できません。導入と運用を成功させるには、3つの「P」を意識することが大切です。また、スムーズに情報共有できる環境を構築する、問題管理や変更管理を行う、専用ツールを導入することなども成功のポイントです。

3つの「P」を意識する

3つのPを意識すれば、ITILを活用した適切なITサービスマネジメントが可能です。3つのPとは、ProcessとPeople、Productです。

Processは業務の進め方など、組織の一連の動きのことです。業務内容の見直しを図るほか、誰が何を担当するのかといったことを考えます。

Peopleは人のことです。品質の高いITサービスを生み出すには、その業務にかかわるメンバーの知識やスキルが重要になってきます。社員の知識やスキルを正確に把握し、必要であれば育成や新たな人材の投入も考える必要があります。

Productはツールのことです。適切なツールの導入により、業務プロセスの標準化や管理で生じる負荷の軽減などが可能です。

ITサービスマネジメントに役立つツールは数多くリリースされています。業務やリソースを一元的に可視化できるものから、ヘルプデスク機能を充実させたもの、ひとつのプラットフォームにあらゆるオペレーションを集約したものなどさまざまです。

自社にマッチしたツールを選ぶのはもちろんのこと、機能や操作性、費用などさまざまなポイントを踏まえて検討するとよいでしょう。

情報の共有化を進める

情報をスムーズに共有できる環境や体制の構築にも取り組みましょう。部署間における情報共有をスムーズに行えないと、インシデントが発生したとき対応が後手に回るおそれがあります。

早急な対応が求められるようなケースにおいて、スピーディーに情報共有ができないと、インシデントが事故に直結する可能性もあります。情報共有が的確にできる環境さえ整っていれば、このようなリスクは回避できます。

たとえば、コミュニケーションツールの導入は、スムーズな情報共有の実現に有効です。ビジネスチャットやグループウェアなどが該当します。

また、情報共有しやすい環境を意識的に作り上げることも大切です。たとえば、部署間の壁があるケースでは、ツールを導入しても円滑な情報共有は難しいでしょう。このようなケースでは、部署間の関係性を良好にし、風通しもよくする取り組みが求められます。

問題管理と変更管理も行う

インシデント管理とは、発生したインシデントに対して、ビジネスへの影響を最小限に抑えて迅速に状況を回復させるプロセスのことをいいます。インシデント管理は重要なプロセスではありますが、インシデントへの対処と記録を実施するだけでは根本的な解決にならず、同じインシデントが繰り返し発生してしまうことになります。そこで、より恒久的な対策を講じるためにインシデント管理のみでなく、問題管理と変更管理を併せて行うことが大切です。

問題管理とは、発生した問題の根本を探り解決へ導くための管理です。インシデントがなぜ発生したのか、どこに原因があったのかを解明することで、具体的な防止策を打ち立てられます。

変更管理は、変更作業によって生じる影響を抑えるための管理です。ITインフラに何らかの変更を行った場合、それが原因でITサービスが停止してしまう可能性があります。このようなリスクを避けるべく、あらゆる変更を適切に管理しコントロールしなくてはなりません。

専用ツールの導入を検討する

ITILに適した専用ツールを導入すると、より効率的なサービスマネジメントが可能です。インシデント管理やイベント管理、情報共有などもしやすくなるため、専用ツールの導入を検討してみましょう。

なお、専用ツールはさまざまなメーカーやベンダーがリリースしており、実装されている機能や特徴などがそれぞれ大きく異なります。クラウドなのかオンプレミスなのか、導入形態もツールによって変わるため、じっくり検討しつつ選定する必要があります。

ITILの認定資格

ITILの認定資格を取得することで、ITサービスマネジメントに関する意識を向上させられる効果が期待できます。資格取得にいたる過程でITILを正しく理解でき、顧客に価値を提供できるサービス理の大切さにも気づけるでしょう。社員の意識が向上すれば、提供するサービスの品質も高まり顧客満足度の向上につながります。

ITILの認定資格として、ITILファンデーションが挙げられます。ITサービスマネジメントの基礎を万遍なく学べる入門者向けの資格となっています。

まとめ

ITILは、ITサービスマネジメントの成功事例やノウハウを分かりやすく整理したコンテンツであり、5つの要素で構成されている点が特徴です。導入によって、顧客満足度の向上やインシデントの減少、レジリエンスの向上、コスト削減などさまざまなメリットを得られます。

ITILを導入して、成果につながるサービスマネジメントを実現するには、3つの「P」に意識して取り組みましょう。また、インシデント管理だけに注力するのではなく、再発を防止するための管理も求められます。情報を速やかに共有できる環境や体制も構築し、専用ツールの導入も検討してみるとよいでしょう。

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