ITインフラとは?構築や運用のポイントを徹底解説!

 株式会社エスエーティ

ITインフラは企業のITシステムの根幹を支える重要な社内インフラのひとつです。老朽化したハードウェアや非効率なインフラ構成は、故障リスクや属人化・運用負荷を高めるため、適切なタイミングでの見直しが必要となります。これらはビジネスの成長を妨げるボトルネックとなりえます。ITインフラにおける課題を可視化し、改善することで事業継続性を高め、ビジネスの成長につなげられることもあるでしょう。本記事では、ITインフラの構築や運用を実践するためのヒントを紹介します。

ITインフラとは?構築や運用のポイントを徹底解説!

近年のITインフラの傾向とは

まずは、ビジネスの根幹を支えるITインフラのトレンドについて整理しておきましょう。

ITインフラの近年のトレンド

IT専門の調査会社であるIDCの「国内ITインフラストラクチャサービス市場予測」※1によると、ITインフラ構築の需要が高まっています。2021年の市場規模は3,569億円、前年比成長率は3.7%となり、規模は拡大しています。
コロナの感染拡大を機に、リモートワーク対応やDX推進のための取り組みが各企業で加速し、ITインフラの設計や構築の需要が増したことが後押ししています。2022年以降も、この流れは継続すると見込まれ、堅調な成長が期待されます。

同時に、複雑化したITインフラ環境における、運用や保守の負荷軽減・リスクの低減のために、セキュリティやネットワークの強化・老朽化したシステムの刷新など、ITインフラの見直しを求める声も高まっています。

経済産業省の発表した「DXレポート」※2では、既存システムの課題が解決しない場合、最大で年間12兆円の損失につながると危惧しています。デジタル企業への転換が重要であると述べられており、レガシーな基幹システムは2025年に6割を越えるといわれています。

このような既存システムの複雑化やブラックボックス化を解消できないでいると、市場の変化に柔軟に対応することが出来ず、DX推進の足かせになりえます。
また、運用保守人材の不足傾向も強まっており、担い手不足によるシステムトラブルやデータ滅失・漏えいのリスクも高まっています。

ITインフラの見直しを検討するうえで、従来オンプレミスで構築していたインフラ基盤を、クラウド上に構築する「クラウドシフト」が主流となりつつあります。
クラウドシフトは、サーバーなどのハードウェアを自社で保有する必要がなく、運用保守をクラウド事業者側に委任できるなど、多くのメリットを享受できるため、近年では基幹システムをクラウド環境へ移行する事例が増加しています。

ただし、クラウドシフトには対象となるシステムの選定や関係者への説明・クラウド移行の知識や経験のある人材の育成・確保など、多大な時間がかかります。

段階的に移行を行う場合でも、新しいシステムへ切り替わるまでの間、部分的に既存システムを運用しながら順番に切り替える必要があり、社内の人材のみで対応・維持することは容易ではありません。そのため外部サービスを活用し既存システムの運用をしつつ、新しいシステムへ移行する方法が多くの企業で採用されています。

参考:
※1 IDC
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ49240322

※2 経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

ITインフラの課題と対策

多くの企業ではDX推進に伴い、ITインフラに関連するさまざまなニーズが拡大しています。たとえば、経営層はDXを望んでデータ活用のために全社横断的なデータ管理を推し進めています。一方で、現場サイドでは従来の業務プロセスを変えたくないなど、システム刷新に抵抗するケースがあります。

複雑化するITインフラ環境では、既存システムの運用に手いっぱいで、新たなことに着手する余裕がないという担当者も多いことでしょう。
ここでは、既存のITインフラ環境における課題について説明していきます。

企業におけるITインフラの課題

ハードウェアの老朽化

基幹システムなど重要なITインフラは、自社でサーバーを用意し管理するオンプレミスで運用している企業は今も多いです。特に企業独自の強みにあわせて、カスタマイズされているシステムでは、オンプレミス環境で運用を続けることは重要な意味を持ちます。

重要なシステムは、365日フル稼働しているケースが多く、ハードディスクなどの経年劣化による故障には注意が必要となります。一般的に、製造から5~7年はメーカーのサポート期間となりますが、稼働しているサーバーが10年以上を越えて使われることも多く、現在利用しているサーバーが突然動かなくなることも十分起こりえます。
そのため、既存システムがEOSL(メーカーのサポート提供の終了)を迎えた場合は、保守のサポートをしてくれる第三者保守サービスなどを利用することも検討する必要があります。

既存システムの複雑化・ブラックボックス化

業務の多くで急速にIT化が進んだことにより、既存システムが事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされていたりするケースがあります。

最初は部門ごとに管理していたシステムが徐々に増加し手に負えなくなったことで、情シスに相談された時には、システム運用の負荷が非常に高くなっている場合もあります。その場合、情シスで一括管理しようと思っても、部門ごとに個別で最適化されたシステムを統合して運用することが難しく、運用が煩雑化します。

また、機能の追加や改修などをしたいと思っても、既存システムのドキュメントが存在せず仕様が分からないと、仕様を理解するために時間とコストが必要となり、リソース不足から改修を断念せざるおえないこともあります。

複雑な運用管理

時代背景を受け、オフィスの縮小やオンライン化・クラウド化が進み、社外からのアクセスやリモートでの生産性を高める環境整備が求められています。特に接続の安定性と速度は、ストレスのない業務運用には不可欠となります。

また、急拡大したテレワークにより運用対象となるデバイスやシステムが増加したことで、運用管理が複雑化し、担当者の負荷は増える一方となっています。

セキュリティ

テクノロジーの進歩にともない、企業のIT資産は拡大しています。広範囲となった企業のITインフラ全体を保護するセキュリティ対策が求められており、突発的に発生する障害や攻撃などから早急に回復する「レジリエンス」の整備が進められています。

BCP対策としても、セキュリティ対策を怠ると大きな損害を被る可能性があるため重要視されており、安定したITシステムの運用が求められています。

社内のインフラエンジニア不足

経済産業省の発表※によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足するといわれています。IT技術に十分な知見を持った人材に対するニーズが依然として高い状況にあり、今後新たにインフラエンジニアを確保するのが困難となりつつあります。

そのため、既存システムを管理している人材の退職などをきっかけに人材不足を課題として挙げる企業が多くなっています。

参考: IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果

コスト

サーバーやストレージなどITインフラストレクチャの調達や導入・運用保守など、システムのライフサイクル全体にかかるコストは、TCO(総所有コスト)で表されます。運用コストの高騰により、新規開発が出来ずに事業機会を逃すと企業価値が低下するリスクがあるため、多くの企業ではTCOの低減が求められています。

特にレガシーシステムや老朽化したハードウェア・非効率的な業務システムの管理は、運用負荷を高め、結果として人件費の上昇につながります。また、コストの効率化のために、既存インフラとクラウドを組合せたハイブリッド環境を採用しても、複数環境にシステムが乱立することによる管理の煩雑さから、システム担当者の負担が増し、コスト削減に結びつかない場合もあります。

単純にシステム導入時のコスト削減だけを追い求めると、結果的にコスト効率の悪いシステムになる可能性があるため、システム導入後の運用や保守にかかる費用(ランニングコスト)までを考慮したITシステムの導入が必要となります。

ITインフラの課題における対応策

運用する既存システムによってITインフラにおける課題は種々あるため、対応策もそれに応じて様々な手段が考えられますが、一般的なアプローチとしては以下の3点が考えられます。

  • 経営者自らがITシステムにおける現状や問題点を把握する
  • 既存システムの刷新などIT戦略ガイドラインの策定を行う
  • 不要なシステムの廃棄、刷新前に軽量化を図る

どのような対応策をとるにせよ、まずは従来のシステム運用の仕組みや技術・予算などの全体を見直して、課題を可視化しておくといいでしょう。そのうえで対策を講じることにより、さまざまなメリットを享受できます。
ITインフラ課題を解決するメリットを、4つに絞って紹介します。

  • 時間と共に増大する運用費を削減し、TCOの低減が見込める
  • 革新的な製品やサービス開発を加速できる
  • デジタル時代において競争優位の維持を実現できる
  • 社内にIT人材が不足している場合アウトソーシングサービスを活用することで、リソースを効率化できる

特に、1つのシステムのみの局所的な課題解決だけに留まらず、将来を見据えて企業全体でどのように変えていくべきかという、長期的な視点が必要となります。

ITインフラの構築と運用

システムの基盤となるITインフラを構築・運用する場合、流れやポイントを踏まえたうえで進めることが不可欠です。ここでは、ITインフラの構築や運用を実践するためのヒントを紹介します。

インフラ構築の流れ

ITインフラの構築は企業やシステムにより違いはありますが、一般的には下記のような流れで進められることが多いです。

企画

目的やどのような構成で設計するかなど、要件を定義します。

設計

要件を基にハードウェア選定やネットワーク構成・セキュリティポリシーなどを設計書に落とし込みます。

構築

設計書を基にサーバーなどハードウェアの設定・ネットワーク構築・ソフトウェアの設定などを行います。

テスト

システムが正常に稼働するか確認をします。

運用

テストが完了したら、実際に運用を開始します。

インフラ構築のポイント

アクセス範囲の拡張性

社内外からのアクセスや機器を問わず、いつでもどこでも利用できるようシステムを構築することで利便性を高めることが可能になります。ただし、アクセス範囲を広げるということはセキュリティの脆弱性につながることもあるため、システムの種類や用途によってアクセス範囲を慎重に定め、利便性とセキュリティを両立できるよう検討する必要があります。

セキュリティ

不正アクセスや情報漏えいを防ぐツールの導入や社内の規定を明文化し、ITインフラ環境の安全性の向上を行います。

外部委託を検討する

インフラ設計や構築に関する専門的な知識をもつ人材が社内に不足している場合、新たに人材を補充する必要があります。インフラ設計や構築を専門とする業者に依頼すれば、予算内でニーズを満たすインフラ基盤を構築できるため、検討する価値はあるでしょう。

ITインフラ運用のポイント

障害発生時の手順の策定

サーバーやネットワーク機器などが故障し障害が発生すると、一時的に基幹システムが利用できなくなり、大きな損失が発生します。そのため、トラブル時の対処法のマニュアル化や対応してくれる業者とのサポート契約の締結など、常時から備えておくといいでしょう。

サーバー負荷の分散

一台のサーバーで運用する場合、突発的なハードウェア故障やアクセス数の増加による負荷増大などにより、業務システムが利用できなくなり、作業効率が下がるリスクがあります。
そのため、サーバーを複数設置して、負荷を分散させる仕組みを作り、安定した稼働を維持する必要があります。

運用コストの軽減

自社でITインフラの管理・保守を内製する場合、スキルや専門知識をもつ人材の継続的な確保や修理・点検を行う機材・部品の調達・保管などが必要となり、かえって固定費が高くなることがあります。そのため、システムの規模が小さい場合は運用をアウトソーシングする方が安くなるケースがあるので、検討してみるといいでしょう。

既存システムからの脱却

急速に変化する時代のなか、企業はDXの阻害要因を取り除き、ビジネスに寄与する変革を行わなければなりません。そのために、既存システムからの脱却は不可欠であり、新システムへの移行が進められています。
ただし、時間や費用、そして人材不足などの問題から移行が容易には進められない現状があります。

場合によっては、新システムの移行前に既存システムがEOSLを迎えて、保守サポートがないまま運用をすることになる場合もあります。その際は、第三者保守を利用して既存システムの延命をしつつシステム移行を進めるという方法も検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

ITインフラは企業のシステムを支える重要な社内インフラの1つです。運用中のITインフラに課題を抱える場合は、適切なタイミングで新システムへの移行などの対策が講じられます。ITインフラの課題解決には、現状の把握や解決策の検討など、多くの時間やコストが必要となりますが、課題を抱える既存システムからの脱却はビジネスに寄与する多くのメリットを享受できます。この機会にITインフラの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

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